top of page

豊かさへのトランスフォーメーション〜「恐れ」を通り抜け、望むものを抱きしめる

来月のPIJオンラインワークショップは、トム&ウェンディー夫妻による真の豊かさの探究です。

トム&ウェンディー夫妻は、長年、それぞれにシニアヘルパーとして活躍されながら、ご夫婦ヘルパーとしても、パートナーシップに課題を抱えるクライアントを支えられています。


お2人でホールドされるワークショップや個人セッションの絶妙なコンビネーションは、軽やかで繊細、安心感がありながら非常にダイナミックです。お2人のエッセンスが生き生きと入れ替わり立ち替わりする様子に、神聖な父性と母性を深い部分で思い出す感覚があり、とても感動しました。


今回は、ワークショップに先立ち、ウェンディーの最新ブログ「切ない:悲しみと喜びとの両方をホールドする言葉が必要な時」から、内容を要約してご紹介させて頂きます。




ウェンディーのブログは、「切ない」という日本語を説明するニューヨークタイムズの以下の記事の引用から始まります。ちなみに、英語では「切ない」を指す言葉はないようです。


「セツナイという言葉は、かつては鮮やかだったものが色褪せた様を意味します。記憶の端にある痛みのうずきであり、全ては無常という智慧に伴う歓びでもあります。セツナイに暗示されるのは、おそらく時間の経過が、最終的には、最も円満で完全な幸福にさえ、血の通う痛みある細い境界線(限界)を引くということです。」


ウェンディーは、人は悲しみを憎んでいると続けます。それを感じないで済むなら何だってするほど。人は悲しみから抑鬱へ入っていくことを恐れるが、本来、悲しみは抑鬱ではなく感情であり、抑鬱は感じないことなのだと書いています。


ウェンディーが自分自身、あるいはクライアントと共に悲しみの感情へ入っていく時、悲しみは常に暖かさをもたらし、それは拡張し、心地良さへと変容していくそうです。


「悲しみを拒絶していれば、歓びもまた拒絶しています。それが、切ないという言葉に感じられると思います。(中略)歳を経て、多くを失ったこのパンデミックを切り抜けている今。歓びと悲しみ、そして無常という人生の本質、これらを同時にホールドすることは、若い頃より楽になってきました。」


それから、ウェンディーは、トムと経験した「切なさ」の体験をシェアします。


トムは何年も前に、美しい木製のローボートを作ったそうです。天気の良い日には、祖母にちなんでフローラと名付けたそのボートで、モーターボートやカヤックやジェットスキーなどが横行する中、州立公園の人里離れたビーチまで2人で漕ぎ出すのが大好きだそうです。


ある日、ピクニックディナーを食べながら、そのビーチで太陽が沈むのを眺めていると、カヤックの大群が湾を横切って行きました。

暗くなる中、2人が波止場に漕いで戻ると、先ほど見かけたカヤックの若者グループに会いました。その中の1人がお2人を見かけ、「先ほど、あなた方「きみに読む物語(2004年)」の映画から、そのまま出てきたみたいに見えましたよ。」と言ったそうです。その映画を見たことがなかった2人は、帰ってからその映画を観ました。


(映画ネタバレ入ります。)

この映画は、愛し合う情熱的なカップルの話を、年老いた男女の語りで描いていきます。


語られる恋愛ストーリーは、認知症で記憶をなくし始めた妻が、夫との馴れ初めをノートに書き溜めたものでした。彼女は夫に「これを読んでちょうだい。そうしたら思い出すから。」と頼んでいたのです。

そして現在、夫は介護施設のベッドで寝ている妻にそれを読み聞かせます。読んでいると、時々、妻の記憶の窓が瞬間的に開きます。でもすぐに窓は閉じて、彼女は動揺と混乱へと戻ってしまいます。


けれど、彼は、多くの喪失と痛みの中、彼女との束の間の繋がりの歓びのために生きています。

そして、彼女の意識が戻ったある瞬間、彼女は夫に尋ねます。死が彼らを分かつことがない程、彼らの愛は十分に強いのかどうかと。

そして、彼らは横になって一緒に死んでいくというお話でした。


トムとウェンディーにとって、これが切ない瞬間だったそうです。

「私たちは、45年間、一緒に生きてきました。かつて鮮やかだったものは色褪せ、そのことでうずく痛みがあり、全ては無常であるという智慧にある歓びと悲しみもあります。


老夫婦がお互いの腕の中で最期を共に迎えるという映画の幻想は、我々の大半には望むべくもありません。それより、どちらか一方が、深い悲しみの中で残されることの方がありそうです。


映画を見た晩、ごちゃ混ぜの感情の中で、私たちは抱き合ってめそめそと嘆きましたよ。」




親を見送る世代の私にも、とても響く内容でした。

人間としての限界を受け入れながら、限りある生命を思いっきり愛する。愛することは生きることだと感じました。


お2人がどのように「望むものを抱きしめる場所」へと案内してくれるのか、とても楽しみです!






ウェンディーについての他のブログ記事


閲覧数:89回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page